迷い猫チャチャのおはなし

迷い猫チャチャのおはなし

迷い猫チャチャの
おはなし

2021年の8月下旬頃、私の実家のコンポストで生ごみをあさっていた猫がいました。 ガリガリにやせ細った赤トラの猫です。

また迷い猫か…

すぐに別のところに行ってくれればいいけれど、と思いました。

私の実家は電気設備工事をしている兼業農家で、倉庫とか納屋とか、 常に自由に出入りできる建物があるので、行く当てのない野良猫が 通りがかることが多いのです。

そうした野良猫を母が初めて世話したのは、30年以上も前になります。 それ以来、子猫が生まれたり、別の迷い猫が住み着いたりで、 実家にはずっと猫が住んでいます。(犬を飼っていた時期もありました)

母も小さい生き物が困っているのを見過ごせない人なので、家に居着いてしまった 迷い猫をこれまでも世話してきましたが、自分の年齢的なこともあって、 これ以上他の猫の面倒を見るのをためらっていました。

2021年8月時点で、実家で飼っている猫は2匹。

キュウ(おキュウちゃん) シャムミックス(シャム雑種)・雄
コミたん(おごじょさん) 日本猫・雌

年齢の近い雄を2匹以上多頭飼いするのは、とても難しいです。お互いをライバルとして 認識してしまって、会うたびに大喧嘩になります。たとえ、兄弟だったとしても。 (私の実家でも、実際に兄弟猫がこうなりました)

赤トラの猫は遺伝的に9割以上が雄なので、あの生ごみをあさっていた赤トラも おそらく雄…飼えない。飼うとしても、家の中に入れるわけにはいかない。

過去には10匹以上猫同時にいた時期もありましたが、その時はほとんどが雌でした。 できれば、あの赤トラには他で住むところを見つけてほしいと思っていました。

でも、近隣に兼業農家の家が多いとは言っても、他に行く当てがなくてうちへ 来たのだとわかっていました。

お盆明けから二週間ぐらい経つと、会社の高所作業車の下に赤トラが居着くように なりました。手前でおキュウちゃんが見張っています。こうなると遅かれ早かれ 喧嘩になってしまいます。

一向に他へ行く気配も見えないので、腹ぺこの赤トラにえさを与えることに しました。初めのうちは近づこうとすると警戒して逃げていたものの、えさを 持ってくる人を覚えたのか、私や母に対しては少しずつ気を許すように なっていきました。

2021年9月23日
この頃になるとえさやりはほとんど私がしていました。長い間お腹を空かせていた せいか、ものすごい勢いでえさを食べて、少しふっくらした体つきになっています。

家で飼うことはできないけれど、会社の近くで私の目の届く範囲なら、と思って 世話を続けました。名前なしなのも気の毒なので、身体全体が赤茶色なことから 「チャチャ」と名前を付けました。

お腹を見せて横になるのは、猫が気を許している証拠です。

10月頃になると、チャチャはすっかり私に懐くようになりました。

…しかし、この時私には気がかりなことがありました。

9月よりも前の時点で、実家を離れて一人暮らしに戻ろうと考えていたのです。 どういう経緯でこれを決めたかは割愛しますが、実家を離れると、夜間に チャチャの世話をすることはできなくなります。

チャチャも人がいる場所の方が安心できると本能的にわかっていたのか、 実家の近くをうろうろするようになりました。そして、先住猫のおキュウちゃんに 追い回されることも増えてきました。

2021年10月15日
私が実家から引っ越す前の日に撮った写真です。今後は、日中にチャチャの様子を 見ることはできても、夜間は母に任せるしかなくなるため、かなり不安がありました。
2021年10月20日
この日、チャチャが私の足にすり寄ってきて離れなかったことが今でも忘れられません。

まさか、この日が最後になるなんて、想像もしていませんでした。

翌日の21日のことです。早朝、いつも6時頃に会社へ出勤していた私は、 会社の近くにある交差点の区画線で、道路に横たわっていた動物を見つけました。

早朝、猫やイタチがトラックにひかれて死んでしまっていることは、 残念ながらよくあることです。私が見た動物、赤茶色で猫なのかイタチなのか ぱっと見わかりませんでした。でも、この時点で嫌な予感はしていたのです。

チャチャであってほしくないと思って、車を止めて近くで確かめました。

チャチャでした。

昨日、あんなに元気だったのに。タイヤの黒い跡が顔についていて、 苦しそうな顔で横たわっていました。まだ温かい。

もしかしたら、私の先を走っていた車にひかれたのかもしれない。

なぜ、私がこんな形で見つけないといけないのか。 なぜ、こんな早朝にスピードを出して運転する必要があったのか。

怒りと悲しみで胸がいっぱいでしたが、チャチャがこれ以上車にひかれないように、 すぐに会社へ向かってビニール袋を取ってきて、事故現場へ戻ってチャチャを 袋の中へ入れました。

そして、会社のみんなにチャチャを見せた後、母と一緒に実家の裏山に穴を掘って、 チャチャを埋葬しました。

もしうちに来なければ、チャチャはもっと長生きできたのか。 それとも、少しの間は幸せな時間を過ごすことができたのか。 私が引っ越しをしなければ、今もチャチャは生きていたのか。

しばらくの間、自問自答していました。

その後、私は思いがけない形で、チャチャが生きていた証を見つけることに なります。

私が引っ越したアパートの管理をしていた不動産会社の方が、渡す書類が あるということで私の会社を訪れました。そのとき、たまたま壁にチャチャの 写真を張っていたのですが、それを見た不動産会社の社長さん(女性)が チャチャの写真を見て

「みーちゃんのお母さん!」

と、おっしゃられました。さすがにこれには驚きました。

私が契約の関係で不動産会社を訪れた時、店内に赤トラの猫がいたのです。 その時は、お店の中で室内飼い?珍しいな、くらいにしか思わなかったのですが、 よく話を聞いてみると、昨年7月頃に会社の前に居着いた親子連れの猫のうち、 子猫の方を世話していたとのことでした。

親の方までは飼えないので、その後親猫がどうなったのかはわからなかった そうですが、この親猫がどうもチャチャだったらしいのです。 (子猫と一緒にいたので、チャチャは母親だと思われていたようです)

後日そのみーちゃんの写真を送ってもらいました。顔つきはチャチャと 違いますが、全体的な雰囲気はそっくりです。この子も雄猫だそうです。

こうしてチャチャの忘れ形見が今も生きていること知り、 私の心は少し晴れたのです。

山本 淳平

この記事を書いた人

山本 淳平 (Jyunpei Yamamoto)

山本でんき有限会社 施工管理 / デジネスラボ放送局 パーソナリティ
高知県幡多地方のインフラを守る 電気・空調・消防設備のプロフェッショナルとして、 地方の暮らしを支え、次世代の担い手を育成します。

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