ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年|今の時代だからこそ子供たちに見てほしい

ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年|今の時代だからこそ子供たちに見てほしい

2022年10月25日 / 山本淳平

今の時代だからこそ子供たちに見てほしい
『ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年』

日本を代表するヒーローの一人、ウルトラマン。そんなウルトラマンのアニメがかつてテレビで放送されていました。タイトルは『ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年』です。

私がこの番組を初めて見たのは小学生の頃で、NHK総合での再放送の時でした(初回の放送は1991年です)。子ども心にも面白かった記憶はあったのですが、つい最近の2021年になって、「『ウルトラマンキッズ』のエンディングテーマはいい曲だったなぁ」と、ふと思い出しました。

『ウルトラマンキッズ』は、ウルトラマンや怪獣を3頭身にデフォルメしたキャラクターが登場する世界観です。その世界では、ウルトラマンと怪獣はお互いに敵同士ではなく、共存する存在です。もともとは『ウルトラマン』の実写TVシリーズが制作されていなかった時期に新たな展開として制作された作品でした。

1996年に『ウルトラマンティガ』(主演はV6の長野博)が放送されて実写TVシリーズが復活すると、『ウルトラマンキッズ』は役目を終えたかのように人々の記憶から遠ざかっていきました。

大人になって改めてこの作品を見返してみると、子どもたちに向けられたメッセージの力強さが、テンポの良い物語に散りばめられているとわかります。何より、声優さんたちがとても楽しそうにキャラクターを演じているのが画面から伝わってきて、見ているこちらもワクワクドキドキの連続です。

この作品に関わっていた人たちを調べれば調べるほど、キャストとスタッフの奇跡的なバランスで物語が成り立っていたのだと気づきました。

キャスト

  • 山田恭子
  • 菅谷政子
  • 高山みなみ
  • 龍田直樹
  • 肝付兼太

スタッフ

  • 原作・総指揮:円谷 皐
  • プロデューサー:尾崎正善、玉川 静、江藤直行
  • 監督:曽我仁彦
  • 音楽:風戸慎介

第1話・第2話:旅立ちまでのあらすじ

宇宙の片隅にあるM7.8星に、一人の赤ちゃんを載せた救命艇が不時着します。救命艇に残されていた名前から「マー」と名付けられた男の子は、8年後、やんちゃで活発な少年に育っていました。

グローサー先生の学校で育ったマーは、卒業を迎えてそれぞれの家に帰る支度をしているクラスメイトの姿を見て、自分には「帰る家」がないと物憂げな気持ちになっていました。

そんな中、マーの親友セブが卒業記念旅行のために宇宙船を組み立て始めます。マーの両親を探しに行こうというのです。マーの友達のピコとターも同行することになりましたが、突然宇宙船のエンジンが作動を始め、宇宙に向けて飛び立ってしまいます——。

こうして「キッズスター号」の旅が始まります。その後、富豪の息子バルと使用人の息子ガッツンも操縦不能の「バル号」ごと仲間に加わることになり、6人の珍道中が幕を開けます。


第3話:「食料」問題と怪獣クレロンの物語

第3話では、キッズスター号の仲間たちが「食料」の問題に直面します。急発進してしまったキッズスター号には、ピコがたまたま用意していたマフィンしか食料がありませんでした。この日の食事は、仲間たちにそれぞれマフィン8分の1個のみ。

それに満足できなかったバルは、最後に残った一つのマフィンをこっそり食べようとします。お腹がすいているのはみんな同じなのですが、自分勝手な行動をとったバルに仲間たちは厳しい視線を向けます。するとバルは何かを思い出したように笑い出し——バル号には食料を保管する巨大な冷蔵庫が格納されていたのです!

ター 「自慢はいいから、さっさと開けて、早いとこみんなに分けろよ」
バル 「『分けろよ』? おい、ター、分けてほしかったら口の利き方に気をつけるんだな」
ター役:高山みなみさん 『名探偵コナン』と『忍たま乱太郎』のそれぞれで25年以上も主役を演じています。現在は少年役を演じる機会が多いものの、『魔女の宅急便』のキキは多くの人が知っているキャラクターです。
しかし、開けてみた冷蔵庫の中身はからっぽ! バルもガッツンもろくな準備をしないまま宇宙に飛び立ってしまったのですから。
ガッツン役:肝付兼太さん 『ドラえもん』のスネ夫役が特に有名です。ガッツンの役回りもまさにスネ夫そのもの。また、『トムとジェリー』では多くの作品でトムを演じています。

一方マーたちは川から飲み水を調達していました。そこに疲労困憊のバルとガッツンが帰ってきます。バルの話では、りんご・バナナ・ぶどうの木があるとのこと。しかし、どこへ行っても一匹の怪獣に先を越されてしまいます。

やがてマーたちの前にも、その怪獣が現れます。

怪獣 「腹減った。食べるものよこせ」
ター 「な、何だよ! 腹が減ってるのはお互い様だい! 文句があるなら相手になってやるぜ!」

そんなターをセブが引き留めると、マーは穏やかな口調で怪獣に語り掛けます。

マー 「お腹がすいているなら、僕たちと一緒に、このオレンジを食べないかい?」

怪獣はオレンジを皮ごとすべて食べつくしてしまいます。それでも「腹減った」と言う怪獣にターが怒り出すと、セブが語りかけます。

「よせよター、ほんの少しでお腹がいっぱいになる人と、
いくら食べても、なかなかいっぱいにならない人がいるんだから」
— セブ

マーとピコ、セブが持っていたオレンジを怪獣に差し出すと、ターも渋々オレンジを二つに割って渡します。ところが、怪獣はもらったオレンジを食べようとせず、泣き出してしまいました。

怪獣 「いくら食べてもダメなんだ!」

クレロンの告白と、セブの言葉

クレロンという名前のその怪獣は、身の上話を始めます。仲間たちの食べ物を横取りして独り占めにしてきたクレロンは、ついに仲間たちに見捨てられてしまいます。

最初は「思う存分食べられる」と浮かれていたクレロンでしたが、食べ終わったあともお腹が減っているような気がして、食べるのをやめられなくなってしまいます。

この作品の放送当時、"過食症"という言葉はありませんでした。現在では、心理的なストレスが原因になっていると知られていますが、劇中の子どもたちはこの状態をどうとらえたのでしょうか?
ピコ 「でも、それならどうしてこれ食べなかったの?」
クレロン 「だって、君たちが優しいんだもん」

一人、その言葉の意味を考えていたセブは、こんな考えにたどり着きました。

「君は食べ物に飢えているんじゃない。
人の優しさに飢えているんだ」
— セブ
セブ役:菅谷政子さん 『エースをねらえ!』で主人公岡ひろみの親友・愛川マキを演じていた人です。主人公に親身になって寄り添う、精神的に大人な友達の役柄をよく演じられていました。『風の谷のナウシカ』にも出演されており、「姫ねえさま!」の台詞が多くの人の記憶に残っている赤い服の女の子です。

セブの言葉に、マーも納得します。

マー 「仲間がみんな行っちゃって、独りぼっちで寂しかったんだ」
マー 「簡単じゃない? 山の向こうへ行って、みんなと仲直りするんだよ」
マー役:山田恭子さん(現・山田ふしぎ) 『ポケットモンスター アドバンスジェネレーション』でレギュラーキャラクターのマサト(眼鏡の男の子)を演じていました。現在はサイエンスライターとして論説や漫画を描いたり、公開授業で科学実験を行ったりもしている多芸多才な人です。

マーの言葉に勇気づけられたクレロンは、かつての仲間たちのもとへ向かいます。ずっと独りぼっちで寂しかったこと、独りではいくら食べてもお腹がいっぱいにならなかったことを告白するクレロン。

クレロン 「みんな~! 意地悪してごめんよ~!」
仲間たち 「仲間はずれにして悪かったよ」「僕たちのところへ帰って来いよクレロン」「またみんなで一緒に暮らそうよ」

温かく迎え入れてくれた仲間たちの反応に、クレロンの目からこぼれたのは、自分を哀れむ涙ではなく仲間たちの優しさへのうれし涙。涙がこぼれ落ちると、クレロンの姿は元の穏やかな怪獣に戻っていました。


物語の余韻——バルとガッツンへの影響

怪獣の仲間たちはマーたちに野菜をプレゼントしてくれました。ピコはクレロンからもらったかぼちゃでパンプキンパイを作り、仲間たちにふるまいます。

一番大きいかけらをとったターを尻目に、バルとガッツンは浮かない表情で小さいかけらを選んで食べ終わると、さえない様子でバル号に戻っていきます。

セブ 「クレロンの話が効いたんじゃない?」
マー 「そっかぁ、あんまりがっつくとクレロンみたいに…」

2つ目を食べようとしていたターは、慌てて手を引っ込めました。


主題歌・視聴情報

『ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年』は、2015年にDVD-BOXが発売されたものの、現在は再販されていないため視聴困難な作品です。是非とも再評価が行われてほしいものです。

▶ オープニングテーマ Ultraman Kids OP / ウルトラマンキッズ OP ▶ エンディングテーマ Ultraman Kids Ed — Twinkle Twinkle Wink

主題歌を歌っている山野さと子さんは、1990年代に『ドラえもん』の主題歌を歌っていた人です(『ドラえもんのうた』は1992年までは大杉久美子さん、2002年から2005年までは吉川ひなのさんが歌っています)。

▶ 第1話(YouTube) Ultraman Kids Haha wo Tazunete 3000 man Kounen 01

DVD-BOXは絶版のため定価よりも大分高くなっていますが、2023年に北米版も発売されています(リージョンコード「1」のため日本の機器では再生不可)。

▶ Amazon.co.jp ウルトラマンキッズ DVD-BOX2(絶版・プレミア価格) ▶ 楽天市場 ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年 北米版 DVD【輸入盤】
2023年7月29日 追記

この作品を見て「あの頃はよかった」という想いを抱くのは、ノスタルジーのせいだけではないと思います。1991年と言えば、まだ日本に元気があった時代。あの頃に比べれば、今の方が生活環境ははるかに便利になっているのに、人々から「寛容さ」が失われてしまったように思えてなりません。

低価格で高品質なものを望むのが当たり前のようになってしまった環境では、どんなものを手に入れても何かが満たされない……まさに、劇中のクレロンの姿そのものです。

クレロンのように自分が悪かったことを素直に謝れるのか、クレロンの仲間たちのようにかつての友達のあやまちを認めて許すことができるのか。フィクションなのできれいにまとまりすぎている部分もありますが、私たちがこの作品から学べることは数多くありそうです。

山本 淳平

この記事を書いた人

山本 淳平 (Jyunpei Yamamoto)

山本でんき有限会社 施工管理 / デジネスラボ放送局 パーソナリティ
高知県幡多地方のインフラを守る 電気・空調・消防設備のプロフェッショナルとして、 地方の暮らしを支え、次世代の担い手を育成します。

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