犬がつないだ、はじめての海外の会話


犬がつないだ、
はじめての海外の会話
〜英語より先に、心がつながった日〜
海外へ行けば、英語が話せるようになる。
学生の頃の私は、そう信じていました。
英語を勉強し、単語を覚え、文法を学べば、世界中の人と自然に会話ができるようになる。 そんな未来を思い描きながら、私はイギリスへ渡りました。
けれど、現実は想像していたものとは少し違いました。
英語は勉強してきたはずなのに、いざ目の前で話しかけられると、 頭の中が真っ白になるのです。
そんな気持ちばかりが先に立ち、知っている単語さえ出てこなくなりました。
海外にいるのに、日本で英語を勉強していた頃より話せなくなったような気さえしました。
今振り返ると、私に足りなかったのは英語力ではありません。
話しかける勇気が出なかった私
海外では、日本にいる以上に「知らない人」と出会います。
日本なら何気なく通り過ぎる場面でも、海外では自然と会話が始まることがあります。
そんな、ほんの一言です。
でも当時の私は、その一言が返せませんでした。
そう思えば思うほど、つくり笑顔だけで終わってしまうことが何度もありました。
英語は好きなのに、英語が怖い。
そんな不思議な感覚を抱えていたのです。
ホームステイ先で出会った、一匹の犬
初めてイギリスでホームステイをした家には、一匹のゴールデン・レトリバーがいました。
私がホストマザーに案内され家に入ると、しっぽを大きく振りながら、 嬉しそうに近づいてきます。
思わず私はしゃがみ込み、
と日本語で話しかけました。
もちろん犬には日本語も英語も関係ありません。
それでも、その子は嬉しそうに私の手に鼻を寄せてきました。
するとホストマザーが笑顔で声をかけてくれました。
たった一言。
でも、そのたった一言から会話が始まったのです。
気がつけば、10分近く話をしていました。
犬がいてくれたから話せた
不思議でした。
あれほど緊張していたのに、その時は自然に英語が出てきたのです。
なぜだったのでしょう。後になって気づきました。
私が話していたのは、「自分」のことではありませんでした。
目の前にいる犬のこと。
共通の話題があったからです。
しかも、その場には「正解」を求める空気がありませんでした。
英語のテストではない。仕事でもない。
その気持ちを共有するだけでよかったのです。
犬が、私と見知らぬ人との間に、小さな橋を架けてくれました。
世界中でペットは"共通言語"になる
その後、海外で暮らす中で、私は何度も同じような経験をしました。
犬を散歩している人に、
と声をかける。すると自然と笑顔が返ってくる。
気づけば、ペットを通して色々な情報を教えてもらっている。
英語が上達したから話せたのではありません。犬が会話のきっかけを作ってくれたのです。
そして、それはイギリスだけではありませんでした。国が違っても、文化が違っても、 犬を見つめる人の表情はどこか似ています。
その言葉には、国境がありません。
ペットは、人と人をつなぐ"世界共通のコミュニケーター"なのかもしれない、 と私はそのたびに思いました。
英語は「正しく話すもの」ではなく、「誰かと笑い合うもの」
日本にいると、英語は勉強するものというイメージが強くあります。
単語を覚える。文法を覚える。発音を練習する。もちろん、それも大切です。
でも海外で私が学んだのは、それ以上に大切なことでした。
犬は、そのことを教えてくれました。
犬は「会話のきっかけ」をくれる存在
英語コーチとして多くの方と接していると、
という相談をよく受けます。
でも実は、会話は難しい話題から始まるわけではありません。
海外では、犬がいるだけで知らない人同士が自然に会話を始めます。
その一言が、世界への扉を開いてくれるのです。
私が伝えたい英語
私は8年間、英語を教えてきました。
でも今、伝えたいのは「英語の勉強法」だけではありません。
英語を通して、人と心を通わせる喜びです。
海外生活で私が得た一番大きな学びは、「英語ができること」ではなく、 「人とつながることの楽しさ」でした。
そして、その最初の一歩を後押ししてくれたのが、一匹の犬だったのです。
あの日、ホームステイ先で出会った犬は、私に「英語は怖くないよ」と教えてくれました。
犬たちは、人が話す「言葉」ではなく、その奥にある安心感や空気を感じ取っています。
この記事を書いた人
桑原 あおい (Aoi Kuwahara)
英語コーチ / デジネスラボ放送局パーソナリティ
「完璧な英語よりも、心を通わせるトーンを」大切にするペット英会話の第一人者。英語への恐怖心を「安心感」に変え、ペットに話しかけるような自然なコミュニケーションを広める活動を行っている。


