今の時代だからこそ子供たちに見てほしい『それいけ!アンパンマン よみがえれ バナナ島』

今の時代だからこそ子供たちに見てほしい『それいけ!アンパンマン よみがえれ バナナ島』
MOVIE REVIEW

今の時代だからこそ子供たちに見てほしい 『それいけ!アンパンマン
よみがえれ バナナ島』

投稿日:2022年8月11日 作成者:山本淳平

作品『それいけ!アンパンマン よみがえれ バナナ島』(2012年/上映時間45分)
監督矢野博之
脚本金春智子
原作やなせたかし
声の出演戸田恵子、中尾隆聖、木村佳乃

あらすじ

ジャムおじさんのパン工場に、バナナ島から祭りの招待状が届きます。 届けられた招待状を頼りに、アンパンマンたちはバナナ島を目指します。

一方、一年中まぶしい光が降り注ぐ常夏のバナナ島では、祭りのためにバナナの収穫が 行われていました。ですが、ある出来事をきっかけに黒い雲が島中を包み込み、 バナナ島の気温が急激に下がっていきます。

アンパンマンたちが島に到着したとき、島のバナナは枯れ果ててしまっていました。 島がこのような状態になってしまった原因を突き止めたいと、アンパンマンたちは 島の中央にあるバナナ山を目指すことにします。

頼もしい申し出を受けた大臣のスッテンとコロリンは喜びますが、女王であるバンナは、 よそものに助けられることを素直に受け入れられません。

登場キャラクター

バンナ(声:木村佳乃)
もののけ姫に匹敵する跳躍力と、南国育ちらしい日焼けした肌が特徴の女の子。バナナ島の女王。
スッテン(声:設楽統)
水色のたすきをかけた、バナナ島の大臣。世話役としてバンナに振り回されている。
コロリン(声:日村勇紀)
ピンク色のたすきをかけた、バナナ島の大臣。大抵スッテンと二人一緒に行動している。

バンナはアンパンマンより先にバナナ山へ向かうため、1人で出ていきます。

震災復興というテーマ

劇場版第24作目となるこの作品は、映画公開の前年に発生した東日本大震災を踏まえて、 「復興」をテーマとした物語になっています。登場人物の台詞や行動のところどころに、 被災地の人々の思いと、被災地に住む人々を助けようとする人々の思いが反映されている ように思えます。

ゲスト声優、木村佳乃さん

劇場版第8作目から恒例となっている芸能人ゲストによるキャラクターの吹き替え、 今作では、東山紀之さんと結婚してお子さんが生まれたばかりの木村佳乃さんが ゲストキャラクターのバンナを演じています。

演技力は抜群の木村さんですが、ちょっと滑舌がよろしくないときがあるようで… (『おしゃれカンケイ』にゲスト出演した時、「馬術部」をどうしても正確に発音できなくて、 何度言っても「ばじちゅぶ!」になってしまったのが妙に記憶に残っています) 絵のキャラクターの動きに合わせて声をあてるのは、映画やドラマの演技と 勝手が違うんでしょうね。

なお、芸能人ゲストの吹き替えには賛否両論あるようですが、劇場版第11作の雛形あきこさん、 第14作の黒木瞳さんのように見事な演技を披露してくれる人もいるので、 一概に悪いとは言い切れないと個人的には思います。(キャラクターのイメージに合うかどうかが 重要かと)

今作ではバナナマンの設楽統と日村勇紀も、そのコンビ名に恥じない堂々とした演技を 見せてくれています。

バンナとばいきんまん、道中の攻防

アンパンマンたちを出し抜いて先回りしようとしたバンナは、道中でばいきんまんの 操縦する「だだんだん」と出くわします。バンナのせいで足止めされたばいきんまん。 バナナを目当てに島を訪れていたばいきんまんは、食べられるバナナが見当たらないため、 すぐに島から去ろうとします。

「だだんだん」が乗り物として使えると目を付けたバンナは、ばいきんまんの興味を 引くために「バナナ山にはジャイアントバナナがある」と、とっさに話を作ります。 その話の途中でバンナの口から「アンパンマン」の名前が出てくると、ばいきんまんは 途端に顔色を変えます。

その後、ドキンちゃんは変装になっていない変装でバンナになりすまし、帆船に乗って バナナ山を目指すアンパンマンたちを妨害します。

アンパンマンたちが変装に気づかないのはいつものことなんですが、いつもバンナの 近くにいるはずのスッテンとコロリンが騙されるのはちょっと…。

ばいきんまんと共にバナナ山に向かうバンナは、好き勝手に行動しようとするとすぐ 邪魔される境遇と、素直になれず中々本音が言えない気質に波長が合ったのか、 なんやかんやで意気投合します。

道中、再びバナナの皮を踏んで大破してしまった「だだんだん」。仕方なく修理を 始めるばいきんまんですが、バンナのわがままについていけなくなり、せっかく来たのに バナナなんてどこにもないと悪態をついてしまいます。

これに腹を立てたバンナは、バナナなんてどこにでもあるんだと探しに行きますが…… 「バナナがすべて枯れてしまった」というスッテンとコロリンの言葉が本当だったと、 バンナは事態の深刻さに気付きます。

一方、船に細工をしたことを悟られてはまずいと判断した偽バンナ(ドキンちゃん)は、 アンパンマン一行からこっそり逃げ出します。偽バンナを探していたアンパンマンは、 本物のバンナ(ややこしい)を見つけて安堵します。

被災地とボランティア、二人のやり取り

この時の二人のやり取り、被災地の住人と被災地を訪れたボランティアという視点で 見ると、なかなか興味深いものがあります。

アンパンマン「大丈夫だよ。バナナ島は、きっと元通りになるよ」
バンナ「関係ないだろ! お前なんか、バナナ島に来たのだって初めてじゃないか! なのにこんなにおせっかいなことをして!」
アンパンマン「えっ」
バンナ「すごい乗り物を持ってたり、空飛べたりすることを自慢したいんだろ! 島のみんなに褒められたいんだろ! 威張りたいんだろ!」
アンパンマン「違うよ」
バンナ「じゃあ何だ」
アンパンマン「うーん…誰かが悲しんでいたり、困っていたりしたら、何か自分にできることをしてあげたい。ただそれだけかなぁ」
バンナ「何だよそれ。バナナ島のことなんて何にも知らないくせに!」
アンパンマン「でも、バナナ島のバナナが美味しいってことはわかるよ」

文字に起こしてみるとバンナの台詞、かなりきつい言い回しです。ただ、被災地の住人が よそから来たボランティアの手助けをどんなことでも受け入れられるのかと考えてみると、 彼女の気持ちもわかるような気がします。

バンナの台詞に人間味があるだけに、アンパンマンの聖人さが余計に引き立ちます。

ばいきんまんの意外な優しさ

この後、アンパンマンの制止を振り切ったバンナは、ばいきんまんと再会します。 「バナナはあったのか」とおちょくるばいきんまんですが、バンナの目からこぼれた涙に 気づき、神妙な面持ちになります。

ここでのバンナとばいきんまんの会話も本作の見所です。すっかり元気をなくしてしまった バンナに、ばいきんまんが喝を入れます。

ばいきんまん「元気出せ。お前はな、元気ってことしか、いいとこがないんだぞぉ? 元気をなくしてどーすんだ! また新しくバナナを育てればいいじゃないか」
バンナ「え…」
ばいきんまん「おれさまなんか、メカを作っても作っても、全部アンパンマンにやられるんだぞぉ? けどまた、つくるんだ!」
バンナ「ばいきんまん、お前ほんとに…弱いんだな」

登場キャラクター数でギネス記録を持っている『アンパンマン』ですが、 ばいきんまんがアンパンマンに負けた回数もギネス級だと思います。

ばいきんまんの言葉が効いたのか、バンナに笑顔が戻ります。

「こおりおに」との決戦

バナナ山にたどり着いたアンパンマンたちは、山体の内部に氷の世界が広がっている ことに気づきます。寒冷化はこの「こおりおに」が元凶でした。

なんとなく、アンパンマンの世界観に似つかわしくない造形です。(TVシリーズの 「こおりおに」は愛嬌のある表情だったんですが…)しかも強い! 3人がかりの パンチを喰らって粉々になっても、またすぐに再生してしまいます。

バナナ島の住人ではないアンパンマンたちがなぜ戦うのか。バンナはその真意がわからず、 迫りくる「こおりおに」を前に立ち尽くしていました。そんなバンナに、「こおりおに」は 容赦なく冷凍光線を浴びせます。

ばいきんまん「何やってんだぁーー!」

ばいきんまんは、バンナの代わりに「だだんだん」で身を呈して冷凍光線を受け止めました。

今作のばいきんまんは妙に男前です。

また珍しいことに、劇中ではアンパンマンと一度も戦っていません。

アンパンマンやばいきんまんに勇気づけられたバンナは、島を守るために立ち上がります。
果たして、バナナ島の運命は?

やなせたかしさんと、続いていく物語

映画の冒頭に登場するウサギは、原作者のやなせたかしさんが声をあてています。 やなせたかしさんはこの映画の公開の翌年、94歳でこの世を去りました。

高知県香美市にあるアンパンマンミュージアムには、キャラクターたちと共に やなせうさぎの像があります。

この映画に参加している主要キャストでも、既に故人となっている人たちが 増え始めてきました。長寿シリーズものの宿命とはいえ、寂しいものがあります。

2023年5月5日追記

原作者のやなせたかしさんが亡くなってから、10年近くが経過しました。 (やなせさんの命日は2013年10月13日)

作者没後も作品が作り続けられる『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』と同様に、 『アンパンマン』の作品もずっと続いていくことでしょう。

酵母菌から作られているアンパンマンと、菌類そのもののばいきんまんが戦いながらも 共存していることを思うと、微生物と人間の忘れられがちな共存関係も 大事にしなくてはならないと改めて実感します。

山本 淳平

この記事を書いた人

山本 淳平 (Jyunpei Yamamoto)

山本でんき有限会社 施工管理 / デジネスラボ放送局 パーソナリティ
高知県幡多地方のインフラを守る 電気・空調・消防設備のプロフェッショナルとして、 地方の暮らしを支え、次世代の担い手を育成します。

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