そんな気持ちを、ずっと胸の奥に抱えていませんか?
親に対して反発を感じながらも、「産んで、ここまで育ててもらった恩がある」「見捨てるのは薄情だ」「自分がひとりでやっていけるのか怖い」——そんな思いが邪魔をして、どうしても動けない。そのまま何年も、気づけば何十年も、その関係の中で消耗し続けている人が、たくさんいます。
親との距離を物理的・心理的に置く前に、まず頭の中で「線引き」をすることが大切です。親があれこれと口を出してくることがらは、そもそも誰の問題なのか。誰が責任をもつべきことなのか。少し視点を上に引き上げて、俯瞰するように眺めてみてください。
あなたがまだ結婚していない。親は「孫の顔が見たい」という自分の気持ちから、早く結婚しろとあなたを責め立てる。
でも、誰と・いつ・結婚するかどうかを決めるのは、いったい誰でしょうか。
明らかに、あなた自身のはずです。親が代わりに結婚してくれるわけではありません。
父と母は昔から仲が悪く、母親はいつも人生に絶望したような顔をしている。
だからといって、子どもであるあなたが全力で母親を幸せにしてあげなければならないのでしょうか。
母親の幸せは、母親自身の問題です。
こうして一つひとつを「親の問題」と「自分の問題」に仕分けていくだけで、頭の中がすっきりしてくる感覚があるはずです。自分の領域に親が勝手に踏み込んできていたことに、少しずつ気づけるようになってきます。
認知レベルでの線引きができたら、次は現実の生活の中で、実際に距離を取っていきましょう。
一緒に住んでいる限り、親はいつでもあなたの生活に入り込んでくることができます。「思い切って」という言葉が必要なくらい、最初は勇気がいるかもしれませんが、一人暮らしを始めることが、自立への最も力強い一歩になります。
同じ家に住んでいても、食事や洗濯を別々にする。親の家に住んでいるなら家賃を払う。こうした「経済の線引き」をするだけで、関係性のあり方が少しずつ変わっていきます。
電話・LINE・メール、すべて「親のペース」ではなく「あなたのペース」で決めていい。仕事が忙しければ折り返さなくていい。心が疲れているときは、返信しなくていい。あなたの生活リズムや心の状態を、まず最優先にしてください。
物理的な距離だけでなく、会話の仕方を変えることでも、心の境界線を引くことができます。ここでは、すぐに実践できる2つの方法をご紹介します。
突飛に聞こえるかもしれませんが、これは実際にとても効果的な方法です。親子というのは、近すぎて、ともすれば「何でも言い合える間柄」として、互いへの遠慮がなくなりがちです。その「遠慮のなさ」が、過剰な干渉や支配につながっていることが少なくありません。
そこで、親に対してあえて「敬語」を使ってみてください。「〜してください」「〜と思います」「ありがとうございます」
言葉を丁寧にするだけで、自然と二人の間に「心理的な境界線」が生まれます。これは「他人行儀」になることを恐れない、ということでもあります。実は、この「他人行儀」こそが、親子関係を健全に保つカギなのです。
親と子は、もともと別々の人格をもつ、異なる人間です。敬語は、その区別を、言葉の上でもう一度はっきりさせるために有効です。しかも、相手への敬意や礼儀を失わない。最強の手段です。
親との会話が、いつも言い争いや感情のぶつけ合いになってしまう…という方にぜひ試してほしい方法です。
相手に配慮しつつ自分の気持ちや考えを伝えるコミュニケーションの手法を、心理学ではアサーティブコミュニケーションといいます。アイメッセージ(I message)はその一種で、すべての発言を「I=私は(僕は)〜」を主語にして相手に自分の意思や要望を伝えるテクニックです。
元々は、1960年代に、アメリカの臨床心理学者のトマス・ゴードン博士が、子どもへの適切な接し方を親に指導する際に提唱したものでした。
「私は~と思う、だからあなたに〇〇してほしい」のような話し方は、「私」を軸にした意思表示となります。このため、強制感を減らしつつも相手に要望を伝えることが可能です。
親を直接攻撃するのではなく、自分がどう感じているかを伝える。それだけで、会話が批判や喧嘩に発展するリスクが大幅に減ります。相手の言い分も聞きながら、自分の気持ちも伝えられる。そういう落ち着いたやりとりが、少しずつできるようになっていきます。
ここまでお読みになって、「それでも、やっぱり親に申し訳ない気がする」と思っている方もいるかもしれません。
その罪悪感は、決して弱さではありません。
幼いころから、親の期待に応えようと必死に頑張ってきた。険悪な両親の間に立って、空気が壊れないように気を使い続けてきた。そうしなければ、家の中で「生き延びられなかった」。そうしなければ、家族が、父と母の夫婦の関係が、「バラバラに壊れてしまっていた」——という経験をしてきた方もいるでしょう。
その罪悪感は、そうして懸命に生きてきた、あなたの歴史の重さを物語っています。
ただ、一つだけ確認させてください。
あなたの人生の主体は、いったい誰なのですか?
親から距離を置くことの、最終的な目的はここに尽きます。あなたが幸せであること。それを、何よりも最優先にしてください。
「あなたは今、何を感じていますか?
何を望んでいますか?」
ぜひ瞑想やマインドフルネスの時間を日常に取り入れてみてください。他人の意見でも、親の期待でもなく、自分の内側から聞こえてくる感覚に耳を傾ける時間は、あなたの人生の軸を取り戻すうえで、とても大きな力になります。
しっかりと自分の両足で立って、失敗しながらでも前に進んでいく。そうやって、あなたがあなたの人生に責任をもって自由に生きていくこと。それ自体が、実は、親を照らす光になるのです。
親との関係に悩んでいる方のご相談を承っています。
一人で抱え込まず、まずは無料相談からお気軽にどうぞ。




